一か月後、 他に人気のない河原の遊歩道。自分以外に誰もいないのは、偶然か作為的なものか。 昨日まで降っていた雨は今日は止んでいて。しけってはいるものの、五月晴れの綺麗な青空が覗いている。 昨日、久しぶりにかかってきた時間渡航局からの電話は、今日この場所を指定してきた。 二人が、二度出逢った、この場所を。 念のため持ってきた長い傘の柄を腕にひっかけて。さっきからもう十何分か、ナオは彼女を待っていた。早く来すぎたのは、それだけ彼女に会いたかったから。 ふと、風が吹いて。桜の枝から残っていた雨の雫が一斉に落ちてくる。 うわ、と腕で顔を庇った、その時。 「ただいま、ナオ」 たった一か月なのに懐かしい、彼女の声。 腕を下して、声の方を振り向くと。 「おかえり、アリス」 ずっと待っていた彼女の笑顔が、そこに咲いていた。 まるで、満開の桜のように。
|